アロハ・エアライン243便
- 投稿No.2053
- 投稿者:舘野洋一郎
- 投稿日:2022-09-05 15:42:57
膠着状態なので、違った視点から考察してみます。
それはアロハ・エアライン243便の事故です。検索したところこの掲示板で一回この事故に言及していますが、深くは考察されていなかったようなので、少し掘り下げてみようと思います。
この事故の起こったのは1988年4月28日で、日航123便の事故から2年8か月後になる。
その日、ハワイ諸島の島と島の間の3往復の飛行をすでに終えていたボーイング737はハワイ島のヒロ空港をホノルル空港に向け13:25に出発し(乗客89人、乗員6人)、いつもと変わらず、上昇を続け28,000フィートの水平飛行にはいった時、機体前方の3分の1の外壁が壊れて飛んでしまうという前代未聞の大事故に直面する。飛んでなくなった部分は天井だけではなく、両横の部分、そして底の部分、それらの骨組みも全部吹き飛び、機体の前と後ろは床にある骨組みだけで繋がっていたというものすごい光景であったが、何とかマウイ島のカフルイ空港に緊急着陸した。この間左エンジンが停止していた。乗務員1人が外に投げ出されて行方不明、乗客の内8人が重症を負った。
NTSBの調査は直接の原因として「外壁のリベットとアルミ板の結合の破綻」を指摘した。
さらに、このように破綻してしまう理由として、次の2つを挙げた。
1. この737は短距離の飛行が多く、他のエアーラインの737に比べるとはるかに多くの加圧、減圧を繰り返している。これにより外壁のアルミ板とリベットに加わる力の回数が他の737よりもはるかに多くなる。
2. 駐機している場所は潮風が吹くところで、塩分によりアルミ板とアルミ板を接着している接着剤が腐食してなくなっている。(リベットはこの接着したアルミ板の両側から固定する構造である。つまり、接着剤とリベットの2つの力でアルミ板を止めていた。)
ここで重要なことは、この事故、外壁が破綻し、外に飛んだ原因は内圧が急に上昇したからなどではなく、内圧はいつもと同じように乗客に快適さを保つために加えられていたけれども、外壁そのものの接合がもろくなっていたので、何時もは耐えていた28,000フィートの外気圧と内気圧の差にその時は耐えることが出来なくて破綻したという事です。
この737は1969年に製造されアロハ・エアラインに納入されています。このエアラインはハワイ諸島の島と島の間でのみ運行していますから、毎日何往復も飛んでいるわけです。この日、事故の前、すでに3往復しています。おそらく1日7往復あるいはそれ以上の飛行をしているかもしれません。この737は1969年から1985年の事故までの16年間でおよそ90,000回の飛行をしています。90,000回、加圧、減圧のサイクルの結果、外壁の接合部がボロボロになってしまったということです。
機体が気圧の低い高度に達すると客室に供給されている気圧で、客室が膨らみ外壁の繋ぎ目が引っ張られ、今度は地上に降りて来ると、客室が収縮し、その引っ張っている力が緩められるという繰り返しが起こるので、これを90,000回やるとリベットと接着剤による継ぎ目が破綻するということです。
この破壊プロセスは飛行機の速さそのものが起こす風の力をトリガーとして劣化した外壁の結合部の崩壊から起こります。結合部はその内圧が加圧減圧を繰り返すことで、弱くなり、劣化して行きます。
このように、この破壊プロセスには急激な内圧も外部からの力もいらないという事です。アロハ・エアラインで見たように、機体自身が時速数百キロで飛ぶ時に起こる風圧が必要なだけです。
この事故の詳細は米国のテレビ・ドキュメンタリー「Air Crush Investigation」シリーズの1エピソードとして放映されましたが、現在ではYoutubeでも見ることが出来ます。
下にこの事故のエピソードのURLを挙げておきますが、残念ながら英語版です。でも映像だけでもおおよその事が分かると思います。https://www.youtube.com/watch?v=YYa7Fq5Ec6c
次の投稿は、この事実をもとに日航123便の事故を考えてみます。