Re.(17) 断熱膨張に伴う温度低下の関連性
- 投稿No.881 元投稿No.880 佐伯さんへの返信
- 投稿者:せきたに
- 投稿日:2022-01-23 14:35:19
佐伯さんへ
この音(18時24分37秒頃に1秒間だけ鳴った警報音)に近い音として乗務員が口をそろえるのが、コンピューターによる自動操縦装を解除したときの「告知音」だと言われていたようで、そこから『疑惑』の著者角田氏は37秒の警報音を自動操縦装置解除の警報音ではないかと考えておられたようだが、私が問題にしたかったのは
「事故調査委員会が行った音響分析の報告は最終報告書の3・1・9項(86ページ)から3・1・10項までに記載されているが、この項では37秒の警報音を客室高度警報音と断定している。」
というところだ。
事故調査委員会は高空で離陸警報音が鳴るとは考えにくいというところから、37秒頃に1秒間だけ鳴った警報音を客室高度警報音だと考えた。
しかし、一方で同型機のパイロットでもあった『天命の陳情』の著者村岡伸治氏はこの音に関しては次のように考えられた。
『天命の陳情』 P70~
「この警報音については、自動操縦装置を解除した時の音ではないかとの意見もあり、事故調は調べ直しておられますが、その音はないとのことですので、まず、この点から説明することと致します。
P20からすると、巡航高度24,000フィートに達し、ピッチ(迎角)を安定させ、正に自動操縦装置のスイッチを入れようとした時、ドーン音が発生しているようです。当時は、今とは違い、手動での操縦が重要視されておりましたので、CAPT見習中は、しばしば手動による上昇の練習をしていました。未だ手動操縦であったため、自動操縦装置解除の音は録音されなかったと思われます。事実、添付の朝日新聞のCVR解読記録文の中には、「マニュアル(手動)だから・・・・」とのCAPTの言葉があります。このことから、この1秒間の警報音は自動操縦装置解除の音ではなく、客室高度警報音か離陸警報音の内、どちらかの警報音であったと考えられます。」
この警報音は本来なら、空中では客室高度警報音としてのみ作動し、地上では離陸警報音としてのみ作動する、一つで二つの役目をする、同じ音色の警報音です。また、この警報音は空中では、通常は離陸警報音としては鳴らないものです。従って、どちらの警報音であるのかの識別が困難な訳ですが、作動油圧損失時には、空中であっても、この警報音が離陸警報音として鳴る可能性があると言われていますので、次に、この点について説明致します。
特に、ボディ ギヤ(胴体に取り付けられた脚)に関してですが、ボディ ギヤの空中での格納状態は、脚柱に対し、トラック(車輪取り付け台)がティルト状態(7度19分の傾き状態)であるべきです。このトラックの傾きは、空中で車輪を格納するために必要なものですが、油圧損失時は、そのトラックの傾きがノット ティルト状態になってしまう可能性があるからです。
ボディ ギヤは胴体下部に、前方へ向けて格納されるため、ボディ ギヤの姿勢は、地上では、逆さの天秤状態であったものが、空中でキヤ格納時は、その姿勢は、横向きの天秤状態へと変化することになります。
ボディ ギヤにはティルト角を固定する機械的なロック機能はなく、空中でのティルト角は、油圧により保持されています。そのため、油圧損失時は、脚柱に対するトラックの角度である7度19分のティルト角が保持されないことになります。また、ボディ ギヤの後輪部にはステヤリング(地上走行用ハンドル)のアクチュエーターがついており、前輪部より後輪部の方が、大分重たくなっています。これらの理由で機が急上昇姿勢の時は、脚柱は急上昇姿勢となりますが、トラックは、後輪部の方が重みが大であるため、反対に垂直姿勢(脚柱に対し直角方向)になろうとします。そのため脚柱に対するトラックが、エアモードのティルト状態から、自然とグランド モードのノット ティルト状態へと変化することになります。それをティルト センサーが感知いてしまうと云うことです。この点、添付図を参照して下さい。また、この点の詳細については専門家にお尋ね下さい。
即ち、ノット ティルトのグランド モードになれば、離陸警報音を鳴らすための条件が満たされることになり、空中であっても、この警報音が離陸警報音として鳴ってしまうと云うことです。当機にも、その現象がみられますので、この点に関し、引き続き説明致します。
『疑惑』P225~230には、客室高度警報音の鳴り方に疑問ありと記されています。客室高度警報音は、客室高度が10,000フィートに上昇した時点で鳴り始めるべきですが、当機は飛行高度が約6,000フィートで鳴ったり、止んだりしています。詳しく調べると、飛行高度とは関係なく、機が失速に関係するような急上昇を初めた時(18時47分58秒と48分53秒)鳴り始め、逆に急降下を始める時、(48分26秒)鳴り止んでいます。
『疑惑』P214に記されている18時25分04秒からの警報音こそが、離陸警報音でなく、客室高度警報音そのものであると思います。その理由は、この警報音発生の11秒後である18時25分15秒に、PRAによる放送が、ちゃんと流されているからです。このことは客室高度警報音とPRAが、正常に作動したことを意味することでもあります。この警報音に対しては、エンジニアがうるさいと感じて、どこかで、消音スイッチで消音していると思います。また消音後は、この客室高度警報音は墜落するまで鳴ることはなく、離陸警報音としての音のみが、油圧損失のため、鳴ったり止んだりしたと思われます。フゴイド運動で、機が急上昇時、車輪のトラックがノット ティルト状態になったら鳴り始め、急降下でティルト状態に戻った時、自動的に鳴り止んだと云うことです。この離陸警報音は、うるさいと感じても、該当のサーキット ブレーカーの位置を探し、そのブレーカーを抜かない限り消音が出来ませんので、P230の飛行高度変化チャートと、CVR上での警報音発生のタイミングを照合させてみれば、この警報音が鳴ったり止んだりした理由が、すぐに理解して頂けると思います。即ち、フゴイド運動時、この警報音が鳴ったり止んだりしていると云うことは、そのサッキート ブレーカーは抜かれていないと云うことを意味し、地上でのみ鳴るべき離陸警報音が、空中であったにも拘わらず鳴っていたという、立派な証になっていると云うことです。
『疑惑』P215からすると、エンジニアが油圧損失に気づいたのは18時25分19秒であり、ドーン音発生から45秒後のことです。ドーン音発生後、約1分間はフゴイド運動もなく、ほぼ正常な飛行を続けている様子が、P230のチャートから察せられます。即ち、24分36.5秒(第二次報告では37.2秒)に、この1秒間の警報音が鳴った時は、油量と油圧の損失が始まったばかりであり、未だ油圧損失状態とは言えず、この警報音は、完全な油圧損失で鳴ったものではないと云うことになります。
次に酸素マスクの話だが、吉岡本に記載されている急減圧とマスクに関する落合証言は要するに
「パーン」という音とほとんど同時に、酸素マスクが自動的に落ちてきた。
ということを語られているだけだ。
下記の
「急減圧のとき、酸素マスクがおちてくることは、もちろん知っていました。急減圧は何かがぶつかったり、衝撃があって、機体が壊れたときに起きると教わっていましたから、そういうことが起きたのだな、と考えたのですが、しかし、何が起きたのか想像もつきませんでした。」
急減圧だけではなく、衝撃のため酸素マスクが落下する場合もあるようだ。
※2015年3月27日、プーケット発成都行きのオリエント・タイ航空OX682便が、飛行中に急降下し、昆明に緊急着陸する騒ぎがあった。
現地紙などによると、機材はボーイング737-300型機で、乗客132名、乗員8名の計140名が搭乗していた。
急激な気圧の変化で、耳や鼻から出血する人や失神する人、泣き叫ぶ人もいたとしている。一部の乗客は中耳炎の症状がみられているが、重傷者はいなかった。乗客が撮影した写真では、衝撃のため酸素マスクが落下している。
2つあるうちの1つのエンジンが故障したために客室の与圧に影響があり、降下する必要があったことが原因と見られている。
このような例もあるので、上記の落合証言からは実際に急減圧が起きたことによって酸素マスクが落下したのかどうかは不明ということが佐伯さんならおわかりになられるだろう。因みに、墜落1ヶ月後の多野総合病院で入院中の落合さんが小原医官との受け答えの中では「急減圧ではなかった」と語られている。